届かなかった言葉の行くところ



森の中で木の葉の落ちる音が聞こえなかったら、落ちた事はどうやって証明されるのか、とかいう禅問答が確かあった気がする。
音波を受け止めてくれる人がいないとしたら、その音は果たして存在するか、っていう。

発信者自身が聞こえてるのだから、発した事自体は本人には自覚あるんだけど、「届かなかった」っていう事実もまた残って。

届かなかった言葉たちっていうのは、どこかに消えてなくなるんじゃなくて、ずっとずっとそれらは蓄積されていくような気がする。

目に入ったまつげが外に出てこなくなっちゃったみたいに。

それは自分を痛めることはないけど、ずっとなんか吹き溜まりのように残ってる。


何かの拍子にそれをうっかり見つけてしまって、たくさんの言葉たちがびっしり自分にのしかかってきて、絶えられなくなってしまう事のないように、それらは「消えた」事になってるんだろう。


「空気の重さ」を普段感じないみたいにね。